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ひと言で表現するなら、何とも不思議な絵本です。いったい何が不思議なのかって?まず表紙をご覧ください。このお話の主人公と思われる擬人化されたネコらしきものが描かれ、背景にはたくさんのさぼてんが描かれています。
ここではお見せできませんが、表紙に巻かれた帯には「自分の愛し方に不安を感じている」「失敗をおそれるタイプだ」「熱中すると周りがみえなくなる」「最近、植物を部屋に置こうと思っている」…〈自分に、身近な人に、思い当たることがある方へ…本書をお薦めします〉…と書かれています。この帯自体も考えてみれば不思議です。こんな絵本、あるだろうか?と思えます。
さて、ちょっと中身をのぞいてみましょう。…と、ますます不思議な世界に気づきます。主人公はソマリーコというネコで、どうやら話の展開すると男の子のようですが、定かではありません。絵本のページを見渡すと、何とあっちこっちにいろいろな仕掛けが張り巡らされていることに気づきます。正体不明の生き物が各ページ下段中央に描かれています。本来、そこにはページ数を示すノンブルがふられているはずなのですが、そこにはちゃっかり妙な生き物が描かれているのです。
ではノンブルはどこに?何と、ページ上段中央で、これまた正体不明の生き物が学芸会などで演目を紹介するかのごとく、ページをめくって紹介しているではありませんか!このあっちこっちに出現する不思議な生き物はいったい何だろう?と思えば、表紙裏にその一覧表があります。
こんな具合に周囲に気を取られがちですが、お話はサボテンを売っているおばさんからサボテンをもらったソマリーコが懸命にお世話をするストーリーです。水もたっぷりあげます。肥料も溢れるほどあげます。身長や体重も計ります。本も読んであげます。洋服も着せてあげます。散歩にも連れて行ってあげます。
ところがサボテンはしなびてしまいます。慌てたソマリーコはサボテン屋のおばさんの元に駆けつけます。そう、ソマリーコが過剰にサボテンを世話しすぎたことが逆にマイナスだったわけです。
サボテンという植物は皆さんもよく知っている通り、あまり手間のかからない植物で、水分や栄養も必要以上にあげることは逆効果です。主人公のソマリーコはそうとは知らず、大切にする余り、愛情をかけすぎる余り、結果的にサボテンを衰弱させてしまったのでした。
ストーリーは教訓的意味合いも持っていますが、全体的には仰天する絵本です。はて、いったい何だったのだろうか?…なんて思う人も多いかもしれません。でも、これは絵本ならではの摩訶不思議な世界です。前述したいろいろな仕掛けもさることながら、北見葉胡さんの絵が何とマッチしていることでしょうか。
「過ぎたるは及ばざるがごとし」という、難しい格言を見事にユニークに解説したかのごとくこの「さぼてん」という絵本。大人からすれば、いったい何のこっちゃ?ということでも、子どもにとってはとっても楽しめるものですし、何がどうとは言い難いのですが、ついついまた開いてしまう、本当に奇妙な絵本です。ぜひぜひ、この不可思議な世界をご覧になってみてください。
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